世界伝説 第68弾

2006年は、再びイランにてコンサートを開催する事が出来ました。アメリカがイラクを攻撃し、とても辛い気持ちであった時、ある日、イランから私達と一緒に活動するスタッフが日本にやって来ました。私の経営するカフェに来てくれたのですが、とてもやつれて、暗く、落ち込んでいました。椅子に座るなり「虚しいね」と言いました。「我々がこれだけ一生懸命、平和の為のコンサートをやっているのに、また戦争が始まってしまって…。」と項垂れていました。私も、とても悲しく、やり切れない気持ちで一杯でしたが、一緒に項垂れる事は出来ない気持ちとなり、思わず彼に言ったのです。「落ち込んでいる場合ではない。解決に向かって動かなければいけないよ。」と。「もっともっとコンサートを一杯やればいいと思う。そして、イランでもっとコンサートをやれたらいいね。」と言ったのです。彼は、顔が上がり「そうだね」と言い、やる気に満ちる表情になってきました。瞳は輝き始めました。そして、今年イランでコンサートをしようと話し合って別れたのでした。話し合った通り、11月に再び副大統領の許可を得、イランの首都テヘランにあります、サーダバ宮殿にて、いだきしん先生のコンサートを開催する事が出来る様になったのです。

イランは、イスラム教の法律ですので、音楽は禁止されています。2004年にペルセポリスで開催出来た事は、奇跡のまた奇跡です。前代未聞と言われています。あの後、色々な世界中の有名なアーティストが、ペルセポリスでのコンサートを申請したそうですが、許可は下りる事はなかったそうです。前にも後にも、いだきしん先生より許可されていないという事を聞きました。音楽が禁止されているイランで、再びコンサートを開催する事は、とても困難な事でした。が、この度はペルセポリスでコンサートを開催していましたので、とてもスムーズに実現へと導かれたのです。いよいよ本番の時が来ました。信じられない様な気持ちもありながら、心は嬉しく、わくわくし、イランへと向かいました。イランの街を歩いていると、女性達のスカーフがとても華やかになっていました。私は、初めて行った時、女性達のスカーフは、黒か茶色よりありませんでした。私も、政府の人に茶色っぽいスカーフを頂きました。ところが、この度イランに行く時に、政府の人から花柄のスカーフを頂いたのです。花柄のスカーフをしていいのかと、戸惑いましたが、政府の人が下さったのだからいいのだと受け止め、スーツケースに入れて行きました。

人間の内面が変われば、取り巻く環境は変わります。イランの街はとても明るく、解放的になってきました。サーダバ宮殿でリハーサルをしている時に、沢山の女性達が私に花束をくれたり、私を取り囲み一緒に写真を撮ったりと、とても楽しいひと時を過ごしました。

私を喜び迎えてくれたのです。その女性達のスカーフも華やかでした。リハーサルの時に、イランを一緒に旅した、前文化担当の奥様が私達に会いに来て下さいました。お土産をもってきて下さいました。お土産を下さった時に「イランで一番売れている大スターです」と言って下さいました。私は喜び、中を開けると、何と私の写真だったのです。一緒に旅した時に撮影してくれた写真を額に入れて持って来て下さったのです。何て粋な表現をなさるのかと、本当に嬉しくなり、笑いが込み上げてきました。この方は、日本での「高句麗伝説」コンサートの時、号泣が止まらなかったと聞いています。その時、イラン大使館から20人位の方がご参加下さいましたが、女性達は全員号泣していたのです。後日、他の国のパーティでお会いした時に「あの時の涙は何だったのか、毎日考えている」と伝えてくれました。「高句麗伝説」にて若光王様の詩を詠んだ時の事です。言葉は通じなくても、魂は通じていく事に人間の豊かさ、素晴らしさを感じます。号泣した場面を語り合うだけで、昔からの知り合いの様に仲良くなれるのです。この奥様とは、言葉は通じなくても、心は通じ合えるとても仲良しになりました。そして、この粋なプレゼントを私に下さったのです。女性達の喜びは、驚く程でした。ただ会うだけで、生命が弾んで、美しい笑顔で、言葉は通じないのに、皆で楽しむ事が出来るのです。心が通じ合えるという事は、素晴らしい事と感動しました。いよいよ、サーダバ宮殿でのコンサートが実現出来ます。皆で喜び、準備し、当日を迎えました。ところが、当日は、日本からの飛行機が台風により欠航となったのです。日本からの方は、コンサートに参加する事を楽しみにいらっしゃるのに、来る事が出来なかったのです。こんな事があるのかと、大変驚き、目の前が真っ暗になりました。が、急いでイランのスタッフに「もう一日、明日、もう一回できないかしら」と相談したのです。彼は政府にお願いに行き、何と許可をとってきてくれたのです。2日連続コンサートを開催する事になりました。続く…。