世界伝説 第156弾

パリでの大成功の作品展の経験を経て、次はスペイン、マドリードへと向かいました。年が明けた2020年1月20日からでした。とても楽しみにしていたスペインへの旅ですが、イベリア航空に乗った時から暗い空気がとても気になりました。働く人も笑顔がなく、不愛想で暗く沈んでいるのです。以前のスペインは、明るい人ばかりで皆笑顔だった事を考えると何が起こったのかと考えます。笑顔は作り物であって、それこそ化けの皮が剥がれてしまったのかと感じたり、国が落ちてゆくその状態の中でお一人お一人も暗くなっていってしまっているのかと案じたり、心配な空気の機内でした。マドリードの空港に降り立った時も以前の様な明るく軽やかなスペインではなく、暗く重い空気が立ち込める空港でした。私はスペインに来たのではなく他の国に来たのかと一瞬自分が間違ったと感じる程思い描いていたスペインとは違う空気だったのです。思い描いたといってもスペインへは何度も行っていますので、勝手に思い描いた訳ではなく、今まで経験したスペインの空気と比較すると、まるで違う国に来たかの様に暗く沈んでいた事がとてもショックな事でした。空港からホテルへ向かう街の中も暗く沈んでいます。大変言いにくい表現でしたが、終わった街という表現がぴったりな有様に世界の危機を目の当たりに見ました。ホテルに着いても暗く活気がなく、ホテルの従業員は笑顔もなくサービス業ではない様な対応でありました。ホテルは幽霊が出る様な暗く、薄気味悪い空気でした。部屋の中もポットがなかったり、色々な必要なものが用意されていなかったりで、とても一流ホテルとは思えない有様でした。スペインは変わってしまったという事を受け容れました。丁度私達のホテルとスタッフのホテルは近く、間にファーストフードのお店がありました。皆で一緒に夕食をとりました。パリの時はコーヒー1杯1万円でしたが、スペインの時は皆で頂いても1万円でした。桁が違う安さでした。明日に備え、解散し翌朝作品展の設営が始まりました。

ホテルのすぐ近くのギャラリーでしたので、とても便利でした。ギャラリーのオーナーさんもとても良い方で沢山ご協力下さいました。作品を展示すると素晴らしい空間が立ち上がり、その美しさに自分でも見とれてしまう程でした。スペインでも沢山の方が作品展に入って来られました。南米からの女性が、マーブリング和紙に私が墨文字で書いた詩書を胸に抱き、涙ぐみ喜んでくださいました。私はこれに出会ったと胸に抱いたのです。「悲願成る 愛の実現」。言葉の意味はわからずともエネルギーと文字で魂出会う事の凄さに人間の存在の計り知れない事に感動します。また、終わり間際に入って来られた男性は、真っ直ぐにマーブリングのネクタイのところに来て、迷わずにお決めくださいました。出会う前に出会っていたと感じる出会いでした。感動的でした。

スペイン語を話す南米の方が多く、南米の状況がどれだけ大変かという事をお一人お一人の生命から感じました。お一人の人が入ってくると私は重い荷物を投げ込まれた様な体感となり身が痛くなるのです。ドカンドカンとコンクリートの塊を投げ込まれた様な衝撃を感じ、体感となるのです。お一人が来られる度にとても嬉しいのですが、身に受ける苦しみや重荷や痛みが耐え難く、いよいよ完全に歩けなくなってしまいました。靴が合わないとその時は考え、急いで街中のデパートに靴を買いに行ったのです。丁度デパートの前に世界一の軽量な靴で有名なスペインのブランド店がありました。履いていない様な軽量の靴を身に着け、これで助かったと感じたのです。まるで、靴下を履いている様に足にフィットし、それでいて軽いですので、こんなに楽な靴はないと私は大喜びをしたのです。が、作品展に戻るとどんなに靴を変えても身に受ける痛み、苦しみは変わらなかったのです。次から次へと痛み、苦しみが飛び込んでくる状態で、限界に達していました。スペインでもいだきしん先生がコーヒーを淹れて下さいました。そのコーヒーを頂く事でまた元気を取り戻し、いらっしゃる方をお迎えしと何とか持ちこたえたのです。

最終日は作品展を終わらせ、いだきしん先生のプレゼンテーションコンサートが最後となります。いだきしん先生が演奏しやすいようにとコンサート前には簡単なサンドイッチや何か召し上がるものをとスタッフに頼んでおりました。ギャラリーのオーナーさんが先生と私の為に生ハムのサンドイッチを作って下さったのです。いだきしん先生は、このサンドイッチが今まで食べた中で一番美味しいとおっしゃり大変喜ばれました。オーナーさんの温かいお気持ちが身に沁み心から感謝し、気持ちよくコンサート会場に向かいました。コンサート会場はそれこそ想像していたものとは違う雰囲気の場所でした。ライブハウスの会場の様な場所でした。先生には相応しくないと感じがっかりしましたが、今更どうにもなるわけではありません。この場をきちんと作る事がやるべき事と気を取り直し準備をしました。リハーサルの時に、いだきしん先生が私の生命の光を演奏して下さいました。涙よりない演奏でした。が、どの様な演奏だったかという事は中々表現出来ないのです。唯一はっきりと見えた事は、いだきしん先生は私の生まれ持っての光はピンクの光でありますが、夜空に輝く星よりも透明な光とお会いした時におっしゃって下さいました。正に、夜空の星よりも透明なピンクの光がいだきしん先生の演奏から見えたのです。この世の希望となる光であり、輝きでした。忘れられない感動が今尚あり続けます。そして、中学の時からの友人の事も演奏して下さいました。友人の本質が見え、本当はこうなのかという事が分かりとても嬉しかったです。人間一人一人生まれ持っての光があり、光を表す事が生きる事と分かりました。一人一人真の自分を活かしていければ、生まれてきた意味が分かり実現出来る人生を生きていけます。マドリードで思わぬ、想像もしていなかった経験をさせて戴き、この時の為に今までがあったと感じる感動に震える開演前でした。私達は作品展にお見えになった方にコンサートをお誘いしました。ほとんど全員の方がお申込み下さいました。そして、コンサート会場に皆様約束通りお越し下さいました。スペイン語は出来ませんが通じ合える感覚があり、私は日本語で皆様をお迎えさせて戴きましたが、何の不自由もなく心は通じ合えたのです。とても嬉しいひと時でした。演奏は私には海の中にいる様な不思議な体感がありました。大昔、ここは海の底だったのかと感じる程海の中にいる体感が強くありました。最後に光が見えたのです。暗闇の中に光が見え、ここから新しい人類史が始まるという事を体感しました。侵略や略奪の歴史が続いた今までの人類史です。それらは全て終わっていくのです。そして、彼方からの光を受け生まれる光が新しい世界を創り、新しい人類史を創るという事が見えるスペインでのコンサートでした。コンサートの体感はまるで異次元です。ここでなら生きていけるとオアシスに辿り着いた体感です。思いっきり息が出来、思いっきり表現が出来、自由である事の喜び、感謝に震えます。素晴らしいコンサートがスペインでの最後となり暗い終わっていく街の空気を感じた辛い時が光に変わっていく事がとても嬉しい事でした。

最後に老舗のレストランに連れて行って頂きましたが、ここも終わった店と感じる程暗く、お料理も死んでいる様なお料理だと感じ、私は食べる事が出来ませんでした。皆でホテルまで歩いて帰り、遅い時間でしたがビデオ講演会の収録をし、それぞれ部屋に戻りました。明日の朝は早い出発です。数時間後にはまた集合です。身支度をし、まだ日が昇る前の暗い中ホテルを出発しました。雨が降っていました。最後までこの度のスペインの滞在は暗いという事を感じ、雨の寒さが身に沁みる空港への道でした。空港で仲間達とサンドイッチを食べたひと時がほっと息つくひと時で安らぎました。何があったという事はないのにとても楽しかった記憶として残っています。空港では日本からのメールを見て大騒ぎとなりました。コロナウイルスの感染が始まった時です。成田空港に着いても入国するのに時間がかかるという内容のメールが入っていました。日本で何が起こっているのか全く想像出来ないまま、それでも日本にまずは帰らねばいけない気持ちで飛行機に乗り込みました。闇に覆われ、沈みゆく暗い街から抜け出た体感がありました。日本に近づくにつれ、身も心も軽くなっていったのです。成田空港に着き、懸念していた事はありませんでしたが、コロナウィルスが武漢から感染が拡大しているという事で騒然としていました。この時からコロナウィルスの感染拡大が一挙に早まったのでした。続く…。