パリでの大成功の作品展の経験を経て、次はスペイン、マドリードへと向かいました。年が明けた2020年1月20日からでした。とても楽しみにしていたスペインへの旅ですが、イベリア航空に乗った時から暗い空気がとても気になりました。働く人も笑顔がなく、不愛想で暗く沈んでいるのです。以前のスペインは、明るい人ばかりで皆笑顔だった事を考えると何が起こったのかと考えます。笑顔は作り物であって、それこそ化けの皮が剥がれてしまったのかと感じたり、国が落ちてゆくその状態の中でお一人お一人も暗くなっていってしまっているのかと案じたり、心配な空気の機内でした。マドリードの空港に降り立った時も以前の様な明るく軽やかなスペインではなく、暗く重い空気が立ち込める空港でした。私はスペインに来たのではなく他の国に来たのかと一瞬自分が間違ったと感じる程思い描いていたスペインとは違う空気だったのです。思い描いたといってもスペインへは何度も行っていますので、勝手に思い描いた訳ではなく、今まで経験したスペインの空気と比較すると、まるで違う国に来たかの様に暗く沈んでいた事がとてもショックな事でした。空港からホテルへ向かう街の中も暗く沈んでいます。大変言いにくい表現でしたが、終わった街という表現がぴったりな有様に世界の危機を目の当たりに見ました。ホテルに着いても暗く活気がなく、ホテルの従業員は笑顔もなくサービス業ではない様な対応でありました。ホテルは幽霊が出る様な暗く、薄気味悪い空気でした。部屋の中もポットがなかったり、色々な必要なものが用意されていなかったりで、とても一流ホテルとは思えない有様でした。スペインは変わってしまったという事を受け容れました。丁度私達のホテルとスタッフのホテルは近く、間にファーストフードのお店がありました。皆で一緒に夕食をとりました。パリの時はコーヒー1杯1万円でしたが、スペインの時は皆で頂いても1万円でした。桁が違う安さでした。明日に備え、解散し翌朝作品展の設営が始まりました。
ホテルのすぐ近くのギャラリーでしたので、とても便利でした。ギャラリーのオーナーさんもとても良い方で沢山ご協力下さいました。作品を展示すると素晴らしい空間が立ち上がり、その美しさに自分でも見とれてしまう程でした。スペインでも沢山の方が作品展に入って来られました。南米からの女性が、マーブリング和紙に私が墨文字で書いた詩書を胸に抱き、涙ぐみ喜んでくださいました。私はこれに出会ったと胸に抱いたのです。「悲願成る 愛の実現」。言葉の意味はわからずともエネルギーと文字で魂出会う事の凄さに人間の存在の計り知れない事に感動します。また、終わり間際に入って来られた男性は、真っ直ぐにマーブリングのネクタイのところに来て、迷わずにお決めくださいました。出会う前に出会っていたと感じる出会いでした。感動的でした。