世界伝説 第155弾

2019年にはパリにて私の心模様作品展といだきしん先生のピアノコンサートを開催する為にパリへと向かいました。最初はニューヨークで開催する予定でした。仲間がニューヨークに下見に行き、ギャラリーの場所やプレゼンコンサートを出来る会場を探して来てくれました。申し込みするばかりとなった時です。会場の申し込みをしたその日にビザの問題を指摘され、急いでビザを調べ始めたのです。アメリカの法律が変わり、中東や北朝鮮に行ったパスポートを持っていると入国出来ない懸念があるという事を知りました。日本にいらっしゃるアメリカ法の弁護士や行政書士、そしてアメリカ在住のアメリカの弁護士さんに相談しましたが、いだきしん先生も私も中東に数多く行っていますので、恐らく入国出来ないという判断となったのです。少しでも懸念がある状態で行く事は当然考えていませんので、ニューヨーク行きは断念しました。その時9月にはどこか行かなければいけないという事だけ感じていましたので他の国を探しました。薫る香りを辿ればパリだったのです。個人的にはパリは好きではなく、前回行った時にも二度とここには来たくないと感じて帰って来た事をよく覚えていたのです。が、薫る香りを辿ればパリよりないと見え、パリでの作品展とコンサート開催を決めたのでした。日本とパリを行き来しているボランティアの仲間もパリにいらっしゃいますので、色んな情報を取って頂き、作品展とコンサート会場を決める事が出来ました。行った事のない場所で作品展やコンサートを開催する事は、とても緊張しドキドキしました。が、行った本番でやるよりない状況でしたので、何があっても行なっていくという覚悟でパリに向かったのです。久し振りに長いフライトの飛行機に乗りました。意外に快適に楽しく過ごせた事で、ほっとしました。そしてパリの空港に到着した時は心が浮き立っている事にほっとしたのです。

空港には仲間が出迎えてくれていました。先に着いて空港で待っていてくれたのです。そして空港からホテルへと向かいました。先に来ていた仲間とコーヒーでも飲みましょうと隣のホテルのカフェに行きました。コーヒー一杯が一万円という価格であった事には精算の時に驚いたのです。物価高とは聞いていましたが、こんなに高いという事に驚きました。道を歩いていても、私とマーブリングの衣装やヘアースタイルに皆さん「ナイス」とか「ビューティフル」とか声をかけてくれるのです。とても楽しい所と感じます。歩くだけで知らない人に声をかけられ、挨拶し心触れ合う事が出来るのです。そして翌日は作品展の設営をしたのです。設営中に行く人が覗いて行きます。気楽に声をかけると皆さん笑顔を交わして下さるのです。面白い所と感じ、心はとても浮き立ちました。狭いギャラリーに目一杯作品を展示しました。着物の反物はショーウィンドウに掛けました。通りを歩く人が着物の反物をそのまま見れる様に展示した時はとても楽しかったです。

翌日は、いだきしん先生のプレゼンコンサートを開催する予定です。初めて行く場所ですからとても緊張し、心配もしました。少し郊外にあると聞き、タクシーで向かいました。パリの中心部から郊外に抜ける道の風景を楽しみました。そしてプレゼンコンサート会場であるパリ国際大学都市日本館に辿り着きました。先生がコンサートをなさる様な場所ではないと感じながらも手遅れです。ここでやるよりないと気を入れ直し、何とか先生が快適に出来ます様にと準備する事が自分達のやる事と考え、皆でお掃除をしたりし空間を作りました。場所は相応しくなくとも、先生が演奏されたら別世界が立ち現れます。宇宙空間が現われ、又フランスならではの哲学的な事を考える演奏をお聴き出来ました。私は音が図形で見えるので、大変哲学的で数学的な図形が見える音に、パリに来て良かったと心の底から喜びが生まれました。パリでなければこの演奏をお聴きする事は出来なかったと感じます。豊かな文化を生み出していく創造性の源が表現されたと感じ、自分はその源を体で感じる事が出来ました事が大いなる喜びでした。

素晴らしいコンサートの後は、いつも集う方々と一遍に仲良くなります。言葉は通じなくても笑顔で通じ合え、心が触れ合い、とても和気あいあいと楽しい時が流れるのです。この時もお越し下さいました方々と名刺交換をしたり、ご挨拶をしたり、写真を撮り合ったりとお祭りの様になりました。コンサートの最後にはご挨拶させて戴く機会があり驚きました。ご挨拶するつもりはなかったので考えていなかったのです。が、コンサートを聴いた直後でしたので経験をそのままお話させて戴くと、とても場が和やかになったのです。そのままお話する事は心通じ合える事の喜びを感じました。

そして次の日はもう一つの大きなギャラリーでの作品展の設営に入りました。一緒に行った仲間は、場所が汚れて大変だと驚いて電話をして来ました。どんなに電話を頂いてもここでやるしかないのです。皆で綺麗に掃除をしようと喝を入れたのでした。会場へ行くと、日本から来てくれた仲間が皆でお掃除を一生懸命してくれていました。そして展示が始まった時も皆で力を合わせて行ないました。大きな会場に沢山の作品が立ち並び、圧巻でした。とても美しく素晴らしい会場となり、お客様をお迎え出来る準備が整いました。お客様は次から次へと飛び込んで来られます。そして皆様瞳を輝かせ、喜んで下さいます。いだきしん先生はおっしゃいました。「この場所に入っただけで人間変わって出ていくよ」と、「興味がなくてただ入っただけの人も、出る時には人間変わっているよ」とおっしゃったのです。私は余りに嬉しくて、胸に光が灯りました。沢山の人にここに入って来て頂きたいと心の底から望み、皆で呼び込みをしました。

私は人の痛み、苦しみを身に受ける体質ですので、人が入って来る度に体が苦しくなったりします。途中いだきしん先生がコーヒーを淹れて下さるので、そのコーヒーを頂きながら体がもっていたのです。コーヒーを頂いて一休みしている時、この瞬間でも前の通りには出会いを求めている人が歩いているかも知れないと感じると、とても奥で椅子に座って待っている事が出来ず、体は動き表に出て行くのです。まだお会いした事がない、出会うべく御方にお会い出来る事を考えると涙まで滲むのでした。こんなにこれから会う人を愛おしく感じた事はありません。パリでの朝は、今日はどんな人に会えるのかと心ときめきワクワクして目覚める事が出来たのです。私は朝は鬱になる事が多く、自分でも何とかしたいと考え生きてきました。パリでは初めて朝起きた瞬間、今日はどんな人に会えるのかと胸がときめいてならないのでした。そしてテラスに出て、日本から持ってきたアンドロメダエチオピアコーヒーのドリップパックを淹れて、外の風景を眺めてコーヒータイムを過ごすのです。とてもワクワクしました。こんな事は人生で初めてです。そのまま会場に向かい、これから出会う方を感じるだけで涙が滲み、そして大勢の方と出会いが続きました。皆様瞳を輝かせ、何事が起こったか位に興奮し、感動し大喜びして下さるのでした。全ての人と親しくなり、前からの知り合いの様に親密になれる事がとても嬉しく感動しました。ある男性が、私のマーブリングした和紙を手に取りじっと眺めていました。その方は「内面をひとつとした国創りをなさろうとしているのですね」とおっしゃいました。何故分かるのだろうかと驚きました。その方はクルド人でした。国を持たないクルド人だからこそ、内面ひとつにした国創りという表現をなさったのだと合点が行きました。素晴らしい感受性の御方でありました。その御方にいだきしん先生が淹れて下さったコーヒーを召し上がって頂けた事がとても嬉しくて、この時も私は涙が滲むのでした。世界中でいだきしん先生に会える方は限られた方だけです。この街でいだきしん先生に会えるこの方の巡りに感動し涙したのです。そして、いだきしん先生が淹れて下さったコーヒーまで頂く巡りとなったのです。国を持たないクルド人の人生は、とても悲しい事が多いと感じます。それはその方の瞳が語っていました。その方が先生に出会え、しばしの時先生と生命交流し、同じ場所で過ごす事が出来たのです。涙よりありませんでした。この方がおっしゃる様に、私は国を超え言語を超え、思想、宗教を超え、内面ひとつの国創りをしたいのだという事を確認出来たのです。とても素晴らしい出会いの連続で、只々楽しくパリでの作品展は終わりました。1000人の方にお会い出来ました。帰る最終日も、もう一つのギャラリーにいると色々な国の方が飛び込んで来られました。ちょうどパリコレの期間中でしたので、色んなデザイナーさん達が訪れていました。最終日の夜、ホテルから出た瞬間、そのホテルはヴァンドーム広場の前ですので、舞台の様な階段を降りていくのです。一斉にカメラマンが私にカメラを向けたのには驚きました。そして、カメラマンではない方もスマホを一斉に向けたのです。私は何が起こったのか理解出来ずにただ驚くばかりでした。その瞬間、前方から女性が「Hola(オラ)!」と昔からの知り合いに会えた様に大喜びし、私に駆け寄って来たのです。肩を抱き、一緒に写真を撮ろうとポーズを取るのです。私はどこで会った人なのかと思い出していました。スペイン人でした。以前スペインで会った事がありますかと聞きました。ないと答えました。今日初めての出会いだったのです。旧知の知り合いの様な出会いでした。仲良く肩を並べ写真を撮り、言葉は通じませんが和気あいあいと喜び合い、まるで再会を喜び合っているようでした。一瞬の出来事でしたが、何と素敵な出会いが起こる街でしょうか。大変面白い瞬間瞬間です。皆で行くレストランでもすっかり親しみ深くなり、言葉が通じなくとも冗談が通じて笑い合う事の多かったその瞬間瞬間もとても楽しい瞬間瞬間でした。驚きと感動に満ちたパリでの滞在は終わりました。忘れられない経験です。続く…。