世界伝説 第20弾

いよいよ人類最古の人骨が発掘された人類発祥の地へと向かう朝が訪れました。早朝にホテルを出、車に乗り込み、延々と走り続けます。道がない道を走り続け、地平線を眺める旅です。数時間走ると、少し建物が並ぶ町があります。建物といっても小屋の様なもので、日本では想像がつかない小屋であり、暮らしの様子です。すぐに通り過ぎ、再び延々と地平線を眺める旅が続きます。行けども行けども辿り着かない事は感じていました。延々とこのまま辿り着けないのではないかと、途方に暮れ、不安になります。が、向かうよりないのです。それだけは生命で分かっています。地平線に沈む太陽を見ながら、運命を神に託しました。この地で何かあったところで、見つかる事はないと感じる地の果てです。

日も暮れ、段々寂しくなってきました。元々何もないですので真っ暗です。それも道のない道を行くので、真っ暗で何も見えない中をただ走り続けていくのです。一軒建物があり、そこで車が止まりました。今日宿泊するホテルだと聞きました。ホテルがある事に喜び、安堵しました。車を降り、建物の中に入った瞬間、とても自分はここには居れないと即座に建物を出てしまいました。いだきしん先生が「建物を出てどうするのだ」と尋ねましたが「自分はここには居れないから外に居る」と言ったのです。エチオピア人が「外は危険であるからやめた方がいい」と止めました。中に入るしかない状況でしたが、自分はどうしても中に居る事は出来ずに困り果てていました。何を話し合って下さったか分かりませんが、再び車に乗り込み、先へ行く事になりました。ここに居る事も出来ません。外に居る事も危険と止められ、かといって先に行く事も不安で一杯です。神様に全てを任せるよりない状況でした。それからまた、延々と真っ暗闇の中を車は走り続けます。次の町に出るまで、何時間も走るのです。衛星電話も通じない所ですので、何をあがいても、どうする事も出来ないのです。どの様な経緯であったか、今となっては覚えていませんが、どこかの村の迎賓館という所に泊まれるという事を聞きました。迎賓館という名前を聞くだけで嬉しくて、私は心に光を見ました。迎賓館に泊まりたいと祈りました。その村に着いた時、虫だらけで、ボロきれがテントの様にかけられている小屋の中に入りました。ここで何をするのか私は不安で一杯でした。もう何も、人の話も聞こえません。すっと私の苦手な動物が前を横切りました。私は大声で叫びました。いだきしん先生が笑っておっしゃったのです。「叫ぶ元気がまだあってよかったね」と。本当に苦笑しました。まだ叫ぶ元気がある事を確認しました。そして、いよいよ迎賓館と言われる建物に連れていって頂きました。建物ではありますが、中に入っただけで外に出てきたホテルと変わりがない建物でした。が、この時は、もうここに居るよりないと分かっていましたので、全てを天に委ね過ごす事に決めました。エチオピアでは寝袋を持っていきますので、寝袋を出して少しの時間横になり、すぐに朝がきました。食事もありませんので、日本から持ってきた保存食を少し頂き、人類発祥の地へと出発しました。暑くて暑くて耐えられない所です。私は「焼け死ぬ」と叫び続けました。後から知りましたが、熱風が吹き吸い込むと即死する危険地帯であったのです。聞く前に自分は、本当に焼け死ぬと恐怖を感じていました。普通の暑さではありません。耐えられる様な暑さでもありませんでした。少しの水を舐める様に飲む時だけが「生きている」と感じる瞬間でした。

人類最古の人骨が発見された現場は、石が置かれていました。エチオピアの軍隊が一緒について来てくれました。いだきしん先生は、焼け死ぬ程暑い中を撮影されました。私は、何の言葉も感情もない、ただ神様に全てを委ねるよりない状況でした。

撮影が終わったという合図が聞こえ、私は車に突進しました。車の中はエアコンがありますので、そこの中に入るよりなかったのです。撮影が終わり、アディスアベバへの帰路は、全く覚えていないのです。行きと同じに地平線を走り続け、長い時間車に乗り続けていた事は間違いありませんが、今となっては何も覚えていないのです。ただ、アディスアベバのシェラトンホテルに着いた時、天国に来た様な安心感と喜びがあふれました。そして、大きな偉業を成し遂げた達成感がありました。神様に感謝しました。無事に行かせて戴き、アディスアベバまで帰り着く事が出来た事、感謝よりありません。ホテルでは自ずと感謝の祈りが生まれます。「高句麗伝説」の詩に詠ませて戴く「人間、生命の源はひとつ 愛」それよりありませんでした。何の雑念もわく余裕もなく、生命のエネルギーを使い果たした様な体感でした。ただ生命がある事、感謝よりありません。人類発祥の地に辿り着く人生を生きるとは、考えた事も想像した事もありませんでした。生まれながらの運命が解放され、真の自分で生きる人生は、予想も想像もした事がない人生が拓かれます。人類発祥の地に辿り着き、肌の色が違い、差別が起こり、戦い合う人間がいかに愚かであるのか、言語、思想、宗教の違いにより理解し合えない事がいかにおかしな事であるのか、生命をもってわかります。人間一人一人、生命の働きを取り戻せば、生命は皆ひとつに繋がっています。愛よりないのです。一人一人が生命の働きを取り戻し、愛を取り戻す事が真の平和を創ると、平和への道を見出しました。続く…。