世界伝説 第21弾

人類発祥の地から無事に帰って来れた安心と、大きな大事業を成し遂げた達成感とで心の中はとても充実感にあふれていました。アディスアベバでは、エチオピア一の祭りが開催されます。いだきしん先生のコンサートを開催するメスケル広場という所は、国家行事が行われる広場です。9月にはエチオピア最大のメスケル祭りが行われます。エチオピアは、貧困と飢餓により人々の内面が不安と恐怖で一杯になっている事を政府の方から聞いていました。人が集まる所に行くと、日頃の不満が爆発し、暴動が起きて死者まで出てしまうという事を聞きました。私達のコンサートで人が沢山集まる時、この様な事が起こってはならないと、何とか防がなければいけない事が大きな課題でした。まずは、エチオピア最大の祭りの現場を経験してほしいと政府からの提案により参加する事になりました。丁度、春に来た時もシェラトンホテルのラウンジにいると、エチオピアの教育大臣が大変な事が起こったご様子で何方様かと必死にミーティングをしておられました。アディスアベバ大学で暴動が起き、死者が出たとお聞きしました。その時の衝撃は、胸に残っています。コンサートでその様な事が起こらない様にとただひたすら祈るばかりであります。メスケル祭りの日が来ました。始まる前に、まだ準備をしている最中、メスケル広場に行ってみました。

天高い空が広がっています。とても穏やかで、爽やかな秋の日です。私は、空を眺めていた時に遠い昔を思い出そうとしました。この空を昔見た事があると胸の内で感じたのです。その時、私はここに来る事は決まっていたと感じたのです。以前、通産省でここに来る事を予感していたと分かった時と同じ経験でした。「遥か彼方の時から、ここに来る事は決まっていた」と言葉に表したのです。とても不思議な経験でしたが、遥か彼方と自分の生命が繋がり一筋の光となった体感がありました。

いよいよ夜になり、メスケル祭りの見所である松明が灯されました。政府の人から松明の火が燃え盛り、崩れ落ちる時に「Go」と合図をするので、逃げる様にと教えて頂きました。その後に暴動が起きるとお聞きしました。松明の火が燃え盛り、崩れ落ちる瞬間が訪れました。「Go」という合図と共に私達は走り去りました。急いで車に乗り込みましたが、既に車は身動きできない程、人によって阻まれています。車の上も人が一杯乗り、ドンドン、ドンドンと叩きます。身動きできない中でもドライバーは、抜け出す方法を知っている方でありますので、無事にホテルまで帰り着く事が出来ました。初めてエチオピアに来た時、マーケットの中で暴動が起こりました。牙を剥いたような形相となる人々を初めて見、とてもショックを受けました。私は、エチオピアでの旅で初めてビデオカメラを撮影する事となりましたので、マーケットの様子を撮影し続けていたのです。暴動が起きる所はとてもカメラを向ける事は出来ませんでした。一部は最初の頃撮っていましたが、それを人に見せる気にはなりませんでした。この事は正解であったと分かりました。エチオピア政府の人から、飢餓で苦しむガリガリに痩せた子供達の写真を撮って寄付金を仰ぐ事はやめてほしい、とお話がありました。それよりもエチオピアの素晴らしい自然環境や優れた歴史、文化を人様に紹介してほしいとおっしゃいました。真に、と私は頷きました。自分もその様に考えていました。故に暴動の写真を人に見せた事はありません。エチオピア政府の方がおっしゃる様に素晴らしい自然環境や素晴らしい歴史、文化を表す映像を、いだきしん先生がずっと撮影されたのです。

 ホテルに無事に帰り、やはり人間の内面が外的環境を作りますので、コンサートを開催する私達が内面美しく、愛に生きる事に徹する事と行き着きました。それは、平成2年に日本テレビ系列の番組「愛は地球を救う」に出演依頼された時、実際は31時間、熊本城二の丸広場にて炎天下の中、いだきしん先生はピアノを弾き続けて下さったのです。開催にあたり、日射病により死者が出たらどうするのかと地元の方々から心配の声が上がり、私はそんな事があったらコンサートを開催する意味がなくなってしまいますので、何としても防ごうと必死で考えました。想定出来る事は想定し、手を打ちました。これ以上打つ手がないと考えた時、主催する側が隙なく生きる事と行き着きました。人間は内的環境が外的環境を作ります。内面に不安があれば、不安な事が起こります。心配があれば、心配な事が起こります。内面に何もなくし、愛に満ちる事が全ての解決と分かり、内面隙なく、美しく生きる事に徹し、尽くしました。結果は、全くその様な心配な状況はなく、皆様健やかに、心地良く、31時間演奏を聴く事が出来たのです。この経験がありましたので、エチオピアコンサートもこれより答えはないと行き着いたのです。続く…。