世界伝説 第115弾

グルジアから帰ってきた翌月はアゼルバイジャンへと旅立ちました。7月です。暑い時期でありました。アゼルバイジャンもイスタンブール経由でバク行きの飛行機に乗りました。初めて降り立ったアゼルバイジャンは暑いという印象でした。もちろん、暑い夏でしたので暑いのは当然なのですが、それだけではない熱いエネルギーを感じました。

最初にご案内頂いた場所は慰霊塔です。アゼルバイジャンの首都バクを訪れる人には最初に慰霊塔をご案内するという事を聞きました。慰霊塔には永遠に消えない火が灯っていました。犠牲者の死を無駄にしない様にと永遠に祈りを捧げる火を灯していると聞きました。自然と黙祷し、手を合わせ犠牲者の魂が報われます事を心からお祈りしました。そして、亡くなった方々の顔写真が並べられている道をお一人お一人のお顔を拝見させて戴きながら、黙祷を捧げ歩きました。若い男性ばかりです。ふと、いだきしん先生がおっしゃいました。自分の生命を守り戦わなければ生きていけたのに、生命賭け戦っていく凄い人達だね、とおっしゃったのです。ロシア軍の戦車に向かい戦ったと聞きました。戦車に向かわなければ生命を落とす事はなかったのです。正義の為に戦った魂に心より黙祷を捧げました。そして、永遠に火が消えない様に平和を創る為に動き続けていく事が生きている人間の行う事であると身をもって分かりました。今でもバクの慰霊塔に燃え続ける炎が、私の内に燃えています。

ゾロアスター教の聖地もずっと火が燃えていました。ゾロアスターは火の神と聞いていましたが、ここでも暑い夏の日差しの中で、熱い炎が燃え続けていたのです。慰霊塔の炎と共に、ゾロアスターの聖地での炎も私の心に燃え続けました。

また、ゴブスタンという所に連れて行って頂きました。ゴブスタンの岩絵は、5000年から20000年前まで遡ると聞きました。岩に刻まれた牛や動物の姿を見、当時の暮らしを想像しました。ふと、いだきしん先生が、何故この様な絵を描いたのだろうねと一言おっしゃいました。私はその意味を分かりたく、心澄まし見させて戴きました。神の世界と通ずるものを感じました。ゴブスタンも暑い所でした。暑い中にも風が吹き、詩を書いたひと時は幸せなひと時でした。

アゼルバイジャンでのコンサートを開催してくれる方は大統領の甥御さんでした。グルジアにてアゼルバイジャンでは海辺の広場で開催すれば、何十万人もの人が参加できるからとお聞きしていました。海辺に連れて行って頂きました。そこには、女性が海に飛び込んでいったという塔がありました。

私は、そこに行った時に初めて陸地に足を着いたという感覚が戻ってきたのです。アゼルバイジャンに着いた時からずっと自分が海の中に沈んでいる様な感覚があったのです。海が近いからそう感じるとは考えても、何故この様な感じになるのかという事を不思議に感じながらバクの街を歩いていたのです。海に沈んだ女性の霊魂を身に受けていたのだと分かりました。ある所へ行った時、ふと風が吹いたのです。どこにでも風が吹くのです。この感じがとても不思議な感覚でした。バクというのは風が吹く街という意味があると聞きました。とても合点がいきました。真夏の暑い中、心の中には慰霊塔の炎が燃えたぎり、とても暑く感じていました。ふと風が吹いて心地良くなり、暑い中も心地良く過ごす事が出来たのです。そして、やっと海に沈んでいる様な感覚からも解放され、生命感覚が戻ってきました。その頃は、バクを発ち日本に帰る時でした。

何日もアゼルバイジャンで過ごした日々は、この地の歴史や報われない魂、霊魂を身に受けていたのです。既にコンサートは始まっているのだと感じました。秋に開催する予定のグルジアと続いてアゼルバイジャンで開催する事になりました。次に訪ねる時は本番の「高句麗伝説」です。暑いバクの街を発ち、日本に帰ってきました。続く…。