世界伝説 第110弾

2009年は7月にレバノンで2度目の「高句麗伝説」コンサートを開催させて戴き、日本に帰り1週間も経たないうちに今度はロシア、モスクワへと旅立ちました。モスクワのグリーンシアターで「高句麗伝説」コンサートを開催するのです。この時宿泊したホテルは、いつも宿泊しているリッツカールトンがある中心の所ではなく、少し外れた所でした。市内を流れる川の流れが見える高層階のホテルです。コンサートに向かい、毎日モスクワ市内を窓から見ていました。いつもよその国に行って様々な風景を見る時、人生の不思議さを考えます。まさかこの様な所に来るとは子供の頃考えた事もないのです。生まれつきの運命を解放された人生は、考えた事も、想像した事も、予想した事もない人生が拓かれます。

モスクワでは、ホテルのラウンジでインタビューを受けました。この時もプリンセスと言われ、王族の暮らしはどの様ですかと尋ねられました。ロシアに来るといつもこの様な事を聞かれます。王族といっても先祖が王族であったというだけで普通の暮らしをしていると何度言ってもピンとこない表情なのです。これは、いつもつきものの話になります。以前来た時にモスクワの市の方にお会いした時に、女性がインタビューに来ました。その方は私のホームページをご覧になっていまして、心模様の衣装がとても素敵だとおっしゃっていました。北京の「高句麗伝説」に向かう時に、私が縮緬生地を探しに行った時に、様々な縮緬の模様を見ているとボランティアの人のお顔が浮かぶのです。この生地はこの方、この生地はこの方とお顔が見えてならず、沢山の生地を購入しました。そして、ご本人が望む方にその場で立体裁断をし、衣装を作ったのです。私は縫製は出来ませんので、生地を裁ちばさみで一瞬にし切っていく感覚が楽しくて、面白くてなりませんでした。出来上がった衣装を着て、北京の「高句麗伝説」に多くのボランティアの方々がご参加されたのです。その写真や日本でもファッションショーを目白の庭園のある日本家屋の会場で開催しました。その時、イランのペルセポリスコンサートの時に写真を撮影して下さったイラン人のカメラマンが丁度日本に来ておられたので、撮影に来て下さったのです。大変悲しい事に、この方はその後ヒマラヤで遭難したと聞きました。信じられない出来事に暫く受け止める事が出来ませんでした。その方が撮影して下さった写真がホームページに載っていたのをご覧下さったのでした。ロシアでの「高句麗伝説」は野外で開催されました。広い空、広い空間に向かい思いっきり表現出来たと感じています。いだきしん先生の演奏の素晴らしい事といったら感動してなりませんでした。今でもDVDを見る度に、また聞く度に魂震え、涙があふれてくるのです。特に好太王様の登場の時は圧巻でした。こんなに爽やかで清々しい御方がいらっしゃるのかと魂震えてならなかったのです。この様な御方にお会い出来るだけでも幸せと生命全てが喜ぶのです。人間とし生まれ、これ程心ときめき、感動する御方に会えるという事は幸せな事と毎回DVDを見る度に魂震え、涙が流れるのです。本番の時に吹いた蒼い風が生命の内を吹き抜けた事を忘れる事は出来ません。そして、感極まり、号泣したあの場面が訪れました。ロシアの地で書いた詩を3つ続けて詠んだのです。最後の詩の時に「引き裂かれた悲しみ」と詠んだ瞬間、胸の奥から引き裂かれた悲しみが込み上げ、号泣しながら詠んだのです。

ロシアの地で引き裂かれた悲しみの詩を詠む日が来るとは感無量でした。幼い頃から胸の内は引き裂かれた悲しみがありました。いつも卵の殻を割って、割った片割れに会いたいとつぶやいていました。そして、いつもロシアを恋い慕い、ロシア映画や音楽、文学に触れると涙があふれるのでした。その恋い慕うロシアの地で「引き裂かれた悲しみ」と言葉にしただけで長い冬の歴史が終わり、雪解けの時が来たと胸の内は涙で一杯でした。涙は外にも表れ、泣きながら詩を詠んだのでした。後からロシア人も号泣していたという事を日本から来た方々が教えてくれました。私は、舞台で号泣したのですから、胸のつかえがとれ、引き裂かれた悲しみが愛に満ち、内面が満たされました。大変感動し、コンサートを終え、舞台を降り楽屋に行きました。いだきしん先生に写真を撮って頂いたりし、そして着替えようとした時です。アンコールですと呼ばれたのです。既に20分は経っていました。急いでもう一度身繕いをし、舞台に向かいました。拍手が鳴り止まなかったのです。20分間もロシア人は拍手をし続けていたという事を日本から来た方にお聞きしました。何という事かと夢を見ている様でした。高句麗が滅んだ後、王族は日本とロシアに亡命しました。私は、離れ離れになった同胞に会いたいといつも胸の内で望んでいました。その詩を詠んだ時にロシアの人にも通じるという事が驚きであり、感動であったのです。私にとっては大変感動するモスクワでの「高句麗伝説」コンサートでした。胸の内の引き裂かれた悲しみが解けていく雪解けの音が聞こえ、やっと真の春が来る喜びに震えました。コンサートを開催する事で一人一人の内面が変わり、取り巻く環境が変わります。世界中には、引き裂かれた悲しみを胸に生きている方が多いと感じます。一人の人間が変わる事で伝播していくことも経験し分かっています。分断の歴史は終わり、元々ひとつである人間が真にひとつになって生きていける平和な世界を創りたいと切に望みます。ロシアで「高句麗伝説」を開催する事を待ち望んできました。やっと念願が叶いました。次へと向かう事が出来ます。続く…。