世界伝説 第12弾

レバノンでは、まず文化大臣にお会いしました。前の夜から入念に準備をし、服装を整え、隙なくと心掛け、自分では完璧にと目指し身支度を整えました。文化大臣がいらっしゃる建物は、私が宿泊しているホテルの前にあります。前にあっても危険で道を渡る事は出来ず、タクシーを呼んで行ったのでした。見える所ですので、すぐに到着し、いよいよ文化大臣とお会いする時が来ました。残念ですがお会いした瞬間、出会いを感じなかった事が気になりました。駐日レバノン大使の時はお会いした瞬間、出会いを感じ、心触れ合ったのです。文化大臣の時は心触れ合う感じがない事が気になりながら、私は話はじめました。完璧にと目指したが故に、とても説明的な話をしてしまいました。文化大臣は私の話は理解して下さったとの事ですが、心触れ合う感じがなかったので物事が進む事はないと感じ、私はがっかりし引き上げてきたのです。話の上では、否定された訳でも断られた訳でもなく、理解を示して下さっていましたが、自分は魂が動かなかったと感じたのです。遥々レバノンまで来ましたが、私にとっては不発に終わり、拍子抜けしてしまいました。この後何をしたら良いのかと戸惑ってしまったのです。一緒に行った仲間が、南部のティールが解禁になったと知らせてくれました。8月に来た時は戦争中で行けない地であったという事を後から知らされました。私は、南部のティールが何処なのか、何があるのか分からないのに「それは行かなくてはいけない」と即答しました。とっても良い所に行く気持ちになりました。心が浮き立ってなりませんでした。出発する時にホテルのエスカレーターで文化大臣とすれ違いました。ご縁はある方なのだと感じ、このご縁が動きに繋がるのかどうかと考えながらホテルを出発した事をよく覚えています。南部に向かうにつれ、海は青く輝き、空は澄み高く、風は爽やかで甘い香りがします。オリーブの木が見えて、鮮やかな花が水の雫がこぼれる様に咲きあふれています。魂震える光景です。ティールに着き、フェニキアの遺跡を回りました。

海に向かう時の風の心地良さ、漂う空気、全てが魂震えてなりませんでした。海が苦手な私も、フェニキアの海は愛おしく、美しいと感じ、恐怖感が生まれません。とても近しい、愛しい海と感じます。いつまでも海からの風に吹かれ、ここに居たいと感じ、ただここに居るだけで幸せを感じました。いだきしん先生が「もう行く」と合図をしました。私は「ずっとここに居たいですね」と言いました。先生は「居ればいいじゃない。自分達は帰るから。」とおっしゃったので、私は慌てて帰る方向に歩いていったのです。去り難い気持ちで、それでも心地良い風に触れ、この瞬間瞬間を愛おしく、大事に感じました。遺跡の前の御家はレバノン特有の小さな鮮やかな花が咲き誇っています。この御家に住む人は、毎日フェニキアの遺跡を庭の様にし生き、暮らしていける事が羨ましいと感じ、心に残りました。

そして、いよいよティールの凱旋門に向かいました。車を降り、輝くフェニキアの遺跡を一つ一つ眺めながら歩を進めました。光輝くフェニキアの魂が喜び迎えてくれました。私は、挨拶をするようにし微笑み返し、楽しく歩いていました。すると、光輝くフェニキアの魂の中に父の魂を見たのです。父は、満面の笑みで光輝いていました。私は思わず「お父さん、ここに居たの」と話しかけました。父は輝く笑顔で応えてくれました。瞬間、父は生きていると、心の中に光が灯りました。人間は、体はなくなっても魂は在り続ける事を父の姿で分かりました。そして「美は永遠」という言葉が生まれました。美しい魂は永遠に生きる事を父の姿で分かる事が出来たのです。心の中は喜びに満ち、内面は永遠なる魂とひとつとなりました。父の死を悲しむ事はなくなり、父の魂と共に生きる新しい人生が始まりました。もちろん母の魂も一緒です。そして、高句麗王の魂も一緒です。魂共に生きる新しい人生は、予想を遥かに超える、永遠なる魂との出会いの人生が拓かれました。遠くで祈りの声が聞こえ、遥か彼方の昔からこの地で生きていた人の魂に触れ、心地良い風が吹いて、爽やかで甘い香りがするフェニキア9000年前の都市ティールが私の故郷と感じ、やっと父の魂に会える所に辿り着けた安堵と喜びで胸は震えるばかりです。

この地でコンサートが出来、人間は死んでも終わらない存在という事を一人一人が生命で分かれば、人間の生き方は変わると、ふと生まれた気持ちを実行していきたいと考えはじめました。争いが絶えず、沢山の尊い生命が失われた地です。人間は死んで終わらない存在と分かれば、生きている生命を傷つけたり、犠牲にする事などやれる訳がないと考えます。永遠なる魂と出会えたフェニキア9000年前の都市ティール、魂の故郷です。楽しく、心弾みベイルートに帰る途中、サイダという地の石鹸工場に立ち寄りました。サイダはハリリ首相のご出身の地であります。石鹸工場に入り、石鹸を作るビデオを見ているだけで心が浮き立ってならなかった事を今でもよく覚えています。何があった訳ではないのに、歩いて見る事が楽しく、その空気に触れている事が楽しくてならないのです。何故こんなにも愛おしく、楽しいのでしょうかと自分でも不思議な気持ちになります。清々しいエネルギーを感じる石鹸工場での瞬間瞬間は、今でも生命の内に清々しい体感として残っています。オリーブ石鹸は中東の文化と感じ、本来は豊かな暮らしを営んでいた地である事がよく分かります。豊かな暮らしを破壊する事は本当に一刻も早くなくしていきたいと切に望みます。ベイルートに戻り、翌日はヨルダンに行く事になりました。スウェーデンでお聞き致しました、ヨルダンの王妃に連絡がついたのです。その方はスウェーデンからヨルダンの王室に嫁いだ方と知りました。ベイルートの空港からヨルダン、アンマン行きの飛行機に乗り込みました。続く…